ぬいぐるみ

<ぬいぐるみと私>

 もう少しで成人になる年齢ではあるが、最近ぬいぐるみを買ってしまった。写真映えなどを考慮して購入したのだが、買ってからはそれを手元に置くことに快感を覚えるようになった。どうやら私がぬいぐるみを買ったのは、単純に写真に収めたいという翼級以上の感情駆られたからなのかもしれない。

 では、その駆動力となった感情とはどのようなものだのだろうか。また、どのような人がぬいぐるみを買いうると考えられるのだろうか。以上の疑問についてこの記事の中で考察を深めていきたい。

<なぜぬいぐるみを好むのか?>

 子供のころにぬいぐるみを買ってもらった経験のある人は多いだろう。ぬいぐるみをもらったときに私たちは何を感じたであろうか。おそらく、かわいらしい、癒されるという答える人が多いことだろう。この項では、なぜ癒されるのかについて説明していきたい。

 私たちが「癒される」という感想を漏らすのは、犬や猫、ハムスターなどの小動物に対するのがほとんどである。つまり、私たちは「かわいらしい:」ものに対して「癒される」という感想を抱く。したがって、なぜ癒されるのかという問いに対しては、なぜ「かわいい」と思うのかという観点から考える必要がある。

 私たちが「かわいい」という感想を抱くのは、ベビースキーマに属している特徴をもつものに対してである。ベビースキーマとは「胴より大きな頭」や「丸みを帯びたフォルム」のような赤ん坊にみられる特徴のことを言う。ぬいぐるみは綿からできているため、おのずと丸っこい形状になりやすい。また、ぬいぐるみは赤ん坊と同じように基本的に私たちよりもはるかに小さい。そのため、ぬいぐるみはベビースキーマの原則に従っており、私たちから「かわいらしい」という印象を抱かれやすいといえる。

<ぬいぐるみの効果は何か?>

 ここまで、ぬいぐるみがなぜ「かわいい」のかという、ぬいぐるみの最も基本的な部分について考察してきた。しかし、これだけでは私たちがぬいぐるみを買う理由を説明することはできない。かわいらしいものがなぜ必要とされているのかという所まで議論を深めなければならない。そこでこの項ではぬいぐるみが私たちの生活にどのような影響を与えるかについて考察する。

 ぬいぐるみは私たちの生活に彩を与える。すなわち、一種のインテリアである。例えば、何も飾っていないタンス上はどこかもの寂しい印象がある。そのため、私たちは絵画や装飾品などをそこに置くことで空白を埋めようとする。ぬいぐるみもまさにこれらと同じ役割を果たすことができる。つまり、ぬいぐるみには空間を埋めるという効果がある。

 ここで、「物寂しい」というワードが出てきた。実はこのワードこそがぬいぐるみの効果を語るうえで非常に重要なカギとなっている。ぬいぐるみは先述したように、「かわいらしい」特徴を多く兼ね備えている。また、私たちは「愛しいもの」をみて寂しさを和らげようとする傾向がある。例えば、一人暮らしをしている学生は寂しさを和らげようとするために、多かれ少なかれ愛情を抱いている友人や恋人、家族と電話越しで話そうとする。ぬいぐるみはかわいらしい特徴を多く持つため、おのずと愛情を抱きやすい。ゆえに、私たちの物寂しさを解消してくれるという効果があるといえよう。

<ぬいぐるみは誰が買うべきか?ーかりそめなりー>

 ここまでぬいぐるみの効果について考察してきた。ぬいぐるみはかわいらしい形状をもつインテリアであるため、私たちの部屋だけでなく、心の物寂しさも解消することができる。これをふまえて、ぬいぐるみはどのような人が購入するのかについて考察していく。 

 ぬいぐるみの恩恵を最も受けることができるのは一人暮らしをしている学生及び経験の浅い社会人であろう。彼らの多くは慣れ親しんだ環境から見慣れない土地で生活するため、心のどこかに物寂しさを抱いていることが多い。また、友人を作ろうにしても初対面の人が多いため。なかなか作るのにも勇気がいる。特に対面で人と会うことが非常に難しい今の状況ではなおさらである。そこでぬいぐるみが光る。ぬいぐるみは買ってしまえば簡単に持ち主の寂しさを解消してくれる。そのため。早く寂しい気持ちを取り除きたいと考える一人暮らしの人たちのニーズにかなっているといえる。

 こうして考えると、ぬいぐるみはAVと同じ側面を持っていると考えられる。AVは女性にもてない男にあたかも彼女がいるかのような錯覚を引き起こさせることによって、購入者のニーズを見たしている。これは「疑似的な愛情」を提供するという点でぬおぐるみと共通している。もちろん、全年齢であるか、人間であるかという違いは存在する。しかし、見方を変えればぬいぐるみはAVなのである。これをどうとらえるかについては取り上げない。しかし、確実に言えることは、やがて現実に帰らねばならぬということをユーザーがわきまえていないと、悲惨なことになるということである。

<まとめ>

 ぬいぐるみはかわいらしい特徴を備えたインテリアとして、物寂しさを抱きがちな人のニーズにこたえた商品である。一方で、ぬいぐるみは「かりそめの愛情」を提供しているに過ぎないともいえる。ぬいぐるみを購入するのは個人の自由である。しかし、いつかは「寂しさを紛らわせるためのぬいぐるみ」から卒業せねばならないと自問自答することが、健全な生活を送るうえでは重要であると考える。